成功する採用戦略

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求めるスペックと資質を備えた優秀な人材を採用し、できるだけ長く自社で活躍してもらう。これが人材獲得を狙う企業の希望ではないでしょうか。採用が組織の成長にも大きく影響します。採用を成功させるためには、採用戦略を立てた上で採用活動を進めていくことが大切です。ここでは、有効な採用戦略の立て方と、戦略を立てる際に必要となる知識やポイントを説明します。

採用戦略とは?

採用戦略とは、採用活動の内容や方法、進め方のことです。
具体的には、以下のような要素が含まれます。

  • ターゲットの確定 … どのような人材が欲しいのかを明確に定める
  • 人材のリサーチ … どうやって探し出すのかを決める
  • 選定 … 選定の基準と、どのようなプロセスで選定するのかを決める
  • アプローチ … どのようにアプローチして人材獲得につなげるかを決める
  • 人事戦略との連動 … 採用という枠を超えて人事戦略と連動させて考える

もし、採用活動がうまくいかず人材確保ができていない、もしくは定着率が低いという場合は、 採用戦略が「立てられていない」「不十分」「間違っている」のいずれかにあてはまると考えられます 。

採用戦略を立案するポイント

上記の最後の項目にもありますが、採用戦略は人事戦略と結びつけて考えることが重要となります。
採用戦略と人事戦略に一貫性がない場合、せっかく採用・入社に行き着いた人材も、離職する確率が高まるでしょう。人事戦略が、実際に人材が働く現場や毎日の業務、取り組む施策などと密接に関わっているからです。

人事戦略には、たとえば研修などの教育体制、キャリアパスの有無や人材の配置、年齢層や経験値による組織構造、評価制度や報酬などが含まれます。つまり、人事戦略を無視した採用は、採用後の人材の状況や環境を無視する採用ともいえるのです。

そうなると、どんなに優秀な人材も、入社前と入社後で、さまざまなギャップを感じたり、経験したりすることになります。ギャップが大きいほど、あるいは、ギャップが積み重なるほど、離職の確率は高くなり、人材がなかなか定着しない状況に陥ってしまうのです。

人材採用戦略の立て方を知る!立案時に使えるフレームワークや考え方を知ろう

採用戦略の3つのステップ

では、具体的に採用戦略を策定するときの3つのステップを説明します。
採用戦略というと難しく聞こえるかもしれませんが、とくに整えておきたい重要な3要素です。

  1. 求める人物像の明確化
  2. 採用の目標値の設定
  3. 適切な求人手法の選定

ここから、一つ一つ確認していきましょう。

求める人材像を明確にする

まず、どのようなスキルや資質、個性を持つ人が欲しいのかという具体的な人物像を明確にする必要があります。注意しておきたいのは、欠員補充や事業状況など、自社の「今」を満たすためだけの採用に走ってしまってはいけないということです。現状視点だけで採用を進めると、全体的、もしくは将来的な観点で見たときに、人事に過不足が生じてしまう可能性があります。

採用戦略として求める人物像を明確化しようとするときには、自社の現状に加えて、将来の状況も踏まえて考えていくことがポイントとなります。将来の自社の状況までカバーできる人選をするためには、事業戦略や人事戦略に基づいた計画に絡めて考える必要があるのです。

ハイスペック人材だからといって、自社が採用すべき人材とは限らないことがわかります。たとえば、高学歴で経歴も申し分なし、同業界において豊富な経験と実積のある40代前半の人材を即戦力として採用したとします。しかし、迎え入れた部署が携わる事業は、徐々に縮小していく計画があり、3年後にはまったく新しい領域に参入する計画があったとしたら、人事にズレが生じてしまうのではないでしょうか。

たとえ今、即戦力人材の補充が必要とされ、採用した人材が活躍できたとしても、わずか数年後には活躍の場を失ってしまう可能性があるのです。新規参入の実施段階に入ってから、外部から新たな人材を迎え入れるというのも、縮小する事業が存在するのであれば、非効率ではないでしょうか。

このようなサイクルを生まないためにも、経営層、各部署(現場)とのコミュニケーションを密にし、欲しい人材の認識を一致させておくことが重要です。求める人材像の策定は、採用活動のすべてに影響を与え、ひいては組織人事や将来的な採用にも影響を及ぼすでしょう。できるだけ時間をかけて、「明確化する自社が求める人物像」と「事業戦略や人事戦略に照らして、本当に自社に必要な人物像」を一致させることも大切です。

具体的な採用目標を立てる

採用は「さぁ!人材を採用しよう」と意気込んでも場当たり的に進めてしまってはうまくいきません。何人採用する必要があるのかから逆算して、具体的な計画に落とし込んでいく必要があります。計画の基準となるのは採用人数。重要なのは、本当に必要な採用人数を見極めることなのです。

基準となる採用人数の目標値を決めたあとに、不可欠となるのが、採用活動の各フェーズのスケジュールや目標値の設定です。入社日から逆算して、書類選考や面談、数回の面接のそれぞれにかける日数を把握します。また、どれくらいの数の応募を見込み、応募数から書類選考や数回の面接を経るごとに何人に絞り込んでいくのかという目標も定めておきましょう。

ここでの目標値はあくまで予測値なので、実際の採用プロセスについてPDCAを回しながら、途中で調整していく必要性が出てくるでしょう。それでも、目標値の存在は、「いつまでに何をどれくらい行うべきか」を明確にしてくれます。あるとないでは大きな差が出るはずです。

求人手法を選定する

現在は、何を使って、どのように採用活動を進めていくかの方法が多種多様に存在しています。採用ホームページ、パンフレット、webサービス、求人サイト、SNSなど挙げればキリがないほどです。人気のある求人手法が、自社で取り入れるべきベストな選択肢とは限りません。

求人手法の選定基準となるのは「ターゲット」です。ターゲット層が、

  • どのような求職活動をするのか
  • 何に興味を持っているのか
  • どのような情報を欲しているのか

これらについてのリサーチを行い、その答えに合わせた求人手法の選定が重要となります。つまり、求める人物像(=ターゲット層)によって、最適な手法が導き出せるのです。

また、「自社の対応能力」も選定の材料になるでしょう。

  • 求職者からのコンタクトや問い合わせが増えたときに迅速に対応できるのか
  • そもそも自社の採用メンバーが使いこなせるものなのか
  • 制作費や利用料、依頼費用の予算を確保できるのか
  • その求人手法を取り入れたときに必要となるマンパワーを確保できるか これらの点も考慮して、求人手法を絞り込んでいくことをおすすめします。

採用戦略は社内の擦り合わせも重要

自社の採用戦略については、経営層から社員まで全社全員の共通理解が不可欠となります。戦略を社員にまで浸透させるためには、人事全体を踏まえた戦略の策定から採用プロセスに至るまで、社員にできるだけ関わってもらえるような仕組みを構築することが有効です。

具体的に何をすればいいかというと、

  • 自社の人事のミッションを共有すること
  • 人事と社員が連携していく全員人事の体制づくり
  • 効率的に人事効果の得られる施策の整理

という3段階のアプローチが社員の理解を促します。

自社の採用戦略の質と得られる効果の度合い高めることができるはずです。この3段階についてもう少し詳しくお伝えしていきます。

自社の人事のミッションを共有する

自社の経営ビジョンの達成にどのような組織を作り上げる必要があるのか、その組織構造を実現するためには、どのような人材を採用する必要があるのかなどのミッションを社員と人事が共有しておくことが大切です。その共有によって、各部署からの意見も集められるはずです。現場の意見というのは、人事業務である採用や施策で成果を出すために欠かせない材料です。経営と現場の状況をすり合わせた、有効な採用が可能になるでしょう。

人事と社員の協力体制を作る

採用を含めた企業人事について、人事と社員が円滑に協力できるような体制を作る必要があります。どのようなアクションが必要とされるかを洗い出し、人事と社員の役割を明確に分担しておきましょう。

採用という人事業務の一部分を例に挙げると、ターゲットの策定、求人内容、採用人数、面接や選定などの個々のプロセス上で、誰が何を担うのかを明らかにし、最終的な採用に向けてどのようにつながっていくのかの一連を確立しておくことが大切です。

社員にとって、人事や採用に対する協力は、自分の役割の範囲外と捉えられるかもしれません。人事には周りを巻き込む能力が求められます。役割の明確な提示が、積極的な協力を促す第一歩となるはずです。

施策を整理する

人事や採用に関して、さまざまな施策を打ち出しますよね。採用計画に対して、実現度の高い施策を実施していくためにも、すべての施策を整理する必要があります。

「効果の薄い多くの施策」より、「確実な効果を得やすい絞り込まれた施策」のほうが効率はいいはずです。本当に必要な施策は何か、社員の意見も取り入れながら精査していきましょう。精査するためには、一つの施策を進めたときの効果測定も欠かせません。

ペルソナ設定

採用戦略にはペルソナ設定も大切になってきます。ペルソナって何のこと?と疑問の残る人のために、ペルソナについて説明します。採用活動で役立つペルソナの設定方法にも触れていますので、ご参考ください。

ペルソナとは?

ペルソナとは、前述した「求める人材像」にも似ています。しかし、ターゲットの範囲を「層」として捉えた上での明確化に留まってしまう企業も少なくありません。ペルソナ設定は、「層」からさらに突っ込んで、「特定の人物像」を明確にします。よりピンポイントな人物像を描くということです。ただし、「こんな人がいい!」という理想像だけのペルソナ設定にならないように注意してください。

採用活動の初期では、応募を集めることがはじめの課題となるため、ピンポイントなペルソナ設定の意義をあまり感じられないかもしれません。しかし、選考が進み、候補者が絞れられてくるほど、ペルソナの存在価値が高まります。

現代の採用市場においては、人材が絞られてからペルソナを把握しても、あまり意味がありません。初期にペルソナ設定をして、できるだけペルソナに近い人材を取り込み、ペルソナにあてはまる人材との継続的なコミュニケーションを取っていく必要があります。信頼関係を築き、入社意欲を喚起していくためには一定の時間が必要なのです。

採用活動に役立つペルソナを設定方法

では、採用活動に役立つペルソナの設定方法をご説明します。
ペルソナ設定には、以下5つのステップがあります。

  1. 全社の意見や希望を踏まえて、人材が必要なポジションと人数を把握する
  2. 各部署の協力のもと、ポジション(求人)ごとに人物像を具体化する
  3. ペルソナのたたき台を社内で共有・確認する
  4. 確認されたペルソナの微調整・全社で認識を一致させる
  5. 採用戦略や選考内容にペルソナを反映させる

精度の高いペルソナを設定するには、現場の意見や発想が頼りになります。実際の現場で活躍している人材の個性や特徴、趣向などを取り入れながら、確度の高いペルソナに仕上げていきましょう。

まとめ

採用戦略を策定するとよくわかるのが、採用プロセス上で発生する業務の種類や工数の多さです。採用を進める企業も求職者も、インターネットを介した活動が主流になっています。さまざまな媒体やツールを使って進めることになるでしょう。社内の協力が得られたとしても、人事や採用担当の作業負担の削減は多くの企業にとっての課題になっています。

そこで、採用戦略の要となるのが採用オウンドメディアです。採用オウンドメディアを持てば、戦略もスムーズに実行していくことができるでしょう。

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