従来の採用手法と異なるダイレクトリクルーティング

少子化の影響もあり、人手不足に陥っている企業が増えています。採用の厳しさが今後も続いていくことが予測される日本で、広がりを見せているのがダイレクトリクルーティングです。

ここでは、ダイレクトリクルーティングが浸透した背景や、メリット・デメリット、そして成功させるためのポイントなどを解説します。

ダイレクトリクルーティング

ダイレクトリクルーティングとは、企業が欲しい人材を探し出し、人材に直接アプローチをして、採用につなげていく手法です。さまざまな要因が相まって、企業の採用活動や求職者の求職活動を変えています。応募を待つだけの採用手法では人材確保が難しい時代、ダイレクトリクルーティングの必要性は今後も増していくでしょう。

従来の採用手法との違いとは?

広がりを見せているダイレクトリクルーティングですが、従来の採用手法と何が違うのでしょうか。

これまで主流だった採用手法としては、求人サイト、人材紹介、ハローワークなど数多くの選択肢が挙げられます。これらは求人を出して応募を待つ、紹介依頼に対して紹介を待つという受け身の採用手法です。求人サイトや紹介会社が持つ、登録者データベース頼りの進行となります。買い手市場のときは、「求人<求職者」の構図が成り立つため、人材確保には有効な手段だったのです。

しかし、ご存知のように、今は高い求人倍率が推移する、売り手市場「求人>求職者」の状況があります。応募や紹介次第となる受け身の手法だけでは候補者を集めることが難しく、いつまで経っても選考や採用にたどり着けない事態が発生しています。

このため、必要とされ始めたのが、ダイレクトリクルーティングです。応募を待つことなく、仲介も入れずに、直接人材にアプローチを仕掛けていく攻めの手法です。求人媒体や紹介会社のデータベースの範囲を超えて、あらゆる媒体から探し出します。求人情報を見て応募するという求職者のステップを待たずに、自社に合う人材を探し出し、「この会社で働きたい」という意欲を喚起するための、積極的な働きかけを行うのです。

ダイレクトリクルーティングが普及した理由

採用の難易度が高まる中、ダイレクトリクルーティングの必要性を認識する企業は増え、採用手法としての普及率も高くなってきています。ここで、ダイレクトリクルーティングが普及した理由を確認しておきましょう。「企業を取り巻く環境の変化」と「IT技術の発達」という2つの要因があると考えられます。

企業を取り巻く環境の変化

企業の外部環境が著しく変化しています。採用の側面から見ていくと、少子化により、多くの企業が人手不足に陥っています。売り手市場が加速したことで、社員にとっても転職しやすい環境となり、人材の流動も激しくなっています。さらに、働き方の多様化も進んでいます。マッチ度の高い人材を見つけ出し、できるだけ長く働いてもらえる環境を整えることが企業の重要な課題になってきたのです。

社会のグローバル化が進む中、ニーズは多様化、加速度的に変化していきます。それに伴い、企業のビジネス環境の変化スピードも速くなり、ビジネスモデルの変化サイクルも短くなっているのです。

自社の変化に合わせ、成長や発展を支える優秀な人材を、スピーディーに確保していく必要性が高まっているのです。経営戦略と採用にかける時間や経費のコストバランスも考慮しなければなりません。

IT技術の発達

デジタル技術の進化が著しい昨今、ITツールの発達も進みました。インターネット上ではあらゆる情報を入手できますが、その中には個人情報も含まれます。

たとえば、Facebookやブログ、ツイッターやLinkedInなどでは、かつては、求人サイトや人材紹介などが所有するデータベースからしか得られなかったような情報も入手しやすくなっています。個人視点では、誰もが手軽に自分の情報を発信する術が増えているのです。

SNS媒体は、生活のコミュニケーション手段として浸透しています。個人情報の入手から継続的なコミュニケーションまで通しで活用できる点も、従来の採用の領域にはなかったメリットといえるでしょう。これらが企業の個人へのアプローチを可能にしています。つまり、ダイレクトリクルーティングが行いやすい環境があるということです。

ダイレクトリクルーティングのメリット・デメリットとは?

ダイレクトリクルーティングは、現代の採用環境では有効な採用手法であると認識され始めています。しかしながら、デメリットもあります。ここでダイレクトリクルーティングの、メリットとデメリットを確認していきましょう。

ダイレクトリクルーティングのメリット

まず、ダイレクトリクルーティングの4つのメリットを紹介します。

採用コストを抑えられる
ダイレクトリクルーティングは、採用プロセスのすべての工程を自社で進めます。人材を探し出す手段も範囲も広くなり、求人広告の掲載料や人材紹介料を支払う必要がなくなるのです。たとえば、SNSや社員紹介などを取り入れていけば、外部コストをかけずに採用できます。

自社にデータベースを蓄積するには時間がかかるため、外部のデータベースを活用する方法もあります。その場合でも、一律のデータベース料だけなので、採用人数に応じて費用が嵩んでいくこともありません。

ダイレクトリクルーティングの導入に際しては、採用プロセスを変更したり、体制を整備したりと、初期に費用を要することもあります。また適切に運用できるまでにはある程度の時間がかかるものです。しかし、長期的に見たときの採用コストは、大幅に削減できる可能性があります。

潜在層にアプローチできる
ダイレクトリクルーティングでは、その時点で転職を考えていない層(=転職潜在層)にもアプローチすることができます。

求人サイトや人材紹介会社に登録していて、かつ良い反応が見込めるのは、今、転職したいと思っている人です。転職に意欲的な人を探すという意味では、確かに有効な媒体かもしれません。しかし、世の中の労働者数を俯瞰すれば、転職顕在層は一部に過ぎず、今は転職を考えていないという人もいるわけです。その中に優秀な人材が隠れていることも少なくありません。

今は転職を考えていない人が転職しようと思い立ち、いずれかの求人媒体に登録して顕在化するのを待ってからの出会いでは、コミュニケーション期間が短くなります。ダイレクトリクルーティングでは、転職潜在層にもアプローチやスカウトを行い、自社の存在を認識してもらうことから始めます。

たとえば、スカウト専用の転職サイトであれば、将来のために「とりあえず登録しておこう」というスタンスでの登録が多いです。SNSであれば、転職意欲とは直接的な関係なしで使われていることがほとんどでしょう。 継続的なコミュニケーションの中で信頼関係が築かれていれば、入社意欲にもつながる可能性が高いです。また、過去のやり取りで相互理解も深まっていることから、精度の高いマッチングが期待できます。

効果が分かりやすい
ダイレクトリクルーティングは、主にインターネットを使って運営を進めます。そして、すべての工程を自社で行います。この2点が合わさることで、すべてのプロセスについての効果測定が可能になります。いずれかのプロセスを他社に依存していると的確なデータが集められないことも多いです。

たとえば、掲載する求人広告のページがどれくらい見られているかを、求人サイトの担当者が詳細まで正確に教えてくれるとは限りません。サービス会社としてのピジネス成果に関わる情報だからです。人材紹介を活用する場合、求職者と接するキャリアコンサルタントのスキルや判断によって、求人内容・自社情報の伝え方や紹介者の質が変わり、自社の採用の質や成果に影響を与えます。いずれにしても自社の問題点や改善の余地が見えにくいのです。

自社主体で行えば、採用数、通過率、離脱率、ページビューなどはもちろんのこと、求人情報がどれくらい見られているのか、どの投稿やページの閲覧が多いのか/少ないのか、どのような情報への反応が多いのか/少ないのかなどの詳細をデータで残すことができます。採用活動上のどの取り組みがうまくいっていて、どれが不発なのか、停滞しがちな部分をしっかり把握することができるのです。それによって、自社で直接、採用プロセスの改善やブラッシュアップができるようになります。

すぐにスタートできる
求人サイトや人材紹介など、何らか外部サービスを活用する場合は、契約手続きから前準備までの時間と工数がかかります。毎回、ヒアリングが行われ、要件確認、原稿確認など、実際の募集開始までにやり取りをしなければなりません。

ダイレクトリクルーティングでは、自社に人材の採用が必要になったタイミングで、求人内容を公開することが可能です。急に欠員が出たというような場合にも、準備段階でまごつくことなくスピーディーに対処できるでしょう。

ダイレクトリクルーティングのデメリット

ダイレクトリクルーティングを導入すれば、採用がうまくいくとは言い切れません。デメリットを認識し、自社で対応したり、体制を整えたりする力があるのかを判断することも大切です。ダイレクトリクルーティングは、早いうちから着手が良いという側面も持ち合わせますが、安易な期待で導入すると、返って採用の停滞を招くことになるので注意しておきましょう。

採用プロセス上の工数は増える
お伝えしてきた通り、ダイレクトリクルーティングはすべての工程を自社で手掛けます。そのため、採用プロセスで必要となる工数は確実に増えます。

求人内容、自社の情報、スカウトメールなどの内容を吟味し、魅力的に作成しなければなりません。対象層や対象者の見極めにも、リサーチや分析などの工数がかかります。面接などのスケジュール調整から、入社意欲の喚起もしっかり行う必要があります。上記の項目は、人材紹介を利用する場合には任せてしまえるものです。

ダイレクトリクルーティングには、十分な人員体制と仕組みが必要です。人数だけでなく、担当する人材には、一定の採用知識とスキルが求められるでしょう。採用担当者のスキルが低いほど、人件費だけでなく全体的に採用コストが嵩んでしまう可能性が高くなります。

効果がすぐに出ないケースがある
ダイレクトリクルーティングでは、PDCAを回しながらブラッシュアップしていくことが大切です。とくに開始初期の段階においては、これまでのやり方や手法を変更したことによって、見えてくる問題点や改善点が多くなると予測されます。まずは、一つ一つの課題をクリアしなければなりません。

最適な運用環境にたどり着くまでには、一定期間が必要です。ダイレクトリクルーティングを始めたからといって、すぐに効果が出るわけではないという覚悟のもと、長期視点を持って進めていきましょう。人材データを集めたり、自社内に採用スキルを蓄積したりする必要性を考えると、将来的な採用の苦戦を避けるためには、できるだけ早いうちに開始しておいたほうが良いということになります。

ダイレクトリクルーティングを成功させるためのポイント

では、ダイレクトリクルーティングを成功させるためのポイントについて解説します。

採用課題を明確化する

まず、自社の採用プロセスや結果を振り返って、クリアすべき採用課題を明確にすることが大切です。現状の課題を解決するプロセスを構築できてこそ、すべての取り組みが有効に機能していくのです。

たとえば、認知度の向上、応募数を増やす、途中離脱や内定辞退を減らす、離職率の軽減、採用コストの削減などが挙がってくるでしょう。自社が躓いているポイントはどこなのか、過剰や不足がないかを探りながら自社が解決すべきポイントを把握します。

その課題に照らし、ダイレクトリクルーティングを導入することが自社にとって必要であり、もっとも適切な解決策になり得るかの判断をしてください。自社の経営や事業運営の状況によっては、有効性が低い、もしくはまだ時期ではないということもあり得ます。ダイレクトリクルーティングでなければならない理由に整合性のある答えがあるか、という問いかけが、的確な判断の助けになるかもしれません。

人的コストをかける体制を整理する

ダイレクトリクルーティングを始めるには、かかる時間と工数をこなせる十分なマンパワーが必要です。それまで外部サービスの利用が多かった企業ほど、増員の必要性が発生する確率は高くなります。

適切な運用が可能な体制が整ってこそ得られる採用コストの削減効果です。始めからコスト削減を意識すると、マンパワー不足がダイレクトリクルーティングの運用を妨げる要因になる可能性があります。自社で実施していく採用プロセス上の項目を具体的に洗い出し、かかる工数や時間などを詳細に算出して、適切な人員を充てましょう。

PDCAを回す

ダイレクトリクルーティングを進めるにあたっては、各フェーズを細分化して数値データを蓄積することが大切です。データの蓄積ができることがダイレクトリクルーティングのメリットでもあるので、最大限に活かしていきましょう。

蓄積するデータを自社の採用プロセスの分析に使うのです。その結果を次の採用に反映させることが採用の確度を上げることにつながります。自社内の採用スキルを上げることや、自社に合うノウハウを蓄積することにも直結します。自社の採用成果を最大化するためにもPDCAを回し続けることが重要です。

経営陣を巻き込む

ダイレクトリクルーティングでは、経営陣の協力が得られるかどうかも採用の成功を左右するポイントになってきます。たとえば、自社の基幹業務を担うエグゼクティブ人材を迎えたいときは、業界や経営に精通した人材を探すはずです。すでにそれぞれに見合うポジションや待遇で活躍中の人材も多いでしょう。

一般の社員は、実際に働く部署や現場のあり方が、入社意欲に影響します。上層ポジションの業務は、同じレベルの経営者や経営層のあり方に左右されます。重要なポジションほど、人材の心を動かすには経営陣の協力が欠かせないのです。

また、どうしても欲しい転職潜在層にアプローチするときにも、経営陣との接点を増やすことでうまくいく可能性が高まります。

まとめ

ダイレクトリクルーティングは、優秀な人材を採用するための有効な手段です。ダイレクトリクルーティングに特化したサービスも増えているので、選択肢に入れてみてはいかがでしょうか。初期段階で不足しがちな人材データベースもすでに構築されています。

より費用対効果を上げるために、採用オウンドメディアを持っておくことをおすすめします。ダイレクトリクルーティングサービスと連動させることで、欲しい人材に自社のことを正確に理解してもらうことができ、入社意欲も効果的に喚起することに大きく貢献するツールです。

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